中国から伝来した漆の技法。沖縄の地で琉球漆工芸として花開き、王家や貴族の什器に、献上品にとその名を広く知られる存在となった。そんな漆に魅せられ、工芸指導所で技術を学び、木工と組み合わせたアクセサリーを作っているのが「工房きぼりや」の森長八恵美さん。漆の魅力を追い続ける彼女に話を伺った。
 
 
ハレの装い 華やかに
 
月下美人ピアスをつける森長八恵美さん(=南城市・工房きぼりや)。漆黒のピアスは大人の女らしさを演出する
 
沖縄の気候が生み出す美
 木工+漆による モダンアート
 
 琉球漆は、五百年以上もの歴史を誇る伝統工芸。とりわけ赤の漆を鮮明に発色させるためには、適度な温度と湿度が欠かせず、高温多湿な沖縄の気候だからこそ生み出された美しい赤の漆工芸品は「琉球朱漆」と呼ばれている。
 森長さんが漆に魅せられ、木工と組み合わせたアクセサリー作りを始めたのは10年前のこと。「木工の仕上げの塗料として、自然の材料にこだわって探し、たどりついたのが漆でした」と話す。
 漆というと連想するのは「器」。取り扱いが難しいことから普段の生活の中で活用することは少ない。
 しかし、森長さんは「水は弾くけれど木の呼吸は妨げない。漆はすばらしい天然素材」と語り、その機能美をアクセサリーの中に追求した。
 鮮やかな朱漆の色合いや、黒漆と色漆の大胆なコントラストを生かしたかんざしは、後姿の美しさを引き立てる。
耳元で揺れる漆黒のピアスは大人の女性らしさを演出。森長さんの若い感性が光る、優美でモダンな装飾具は、洋服にも和服にも、フォーマルにもカジュアルにも似合うとあって、幅広い年代の女性の人気を集めている。 
 また、艶やかな漆ペンダントにサンゴやトルコ石をあしらったり、藤色や若草色の色漆を使った作品も手掛けるなど、上質な「装い」として漆の魅力を引き出している。
 琉球時代から続く漆の輝きの中に、和の風を感じさせる森長さんの作品は、木工と漆の繊細な技から生まれるモダンアートなのである。
 
左写真:シックでモダンなかんざし。下から、琉球らしい朱色が鮮やかな「紅薔薇かんざし」、黒と赤の配色が美しい「蝶かんざし」、藤色の色漆を用いた「黒薔薇かんざし」
右写真: 中央は漆黒にサンゴの赤が映える「サンダンカペンダント」。右はサンゴとトルコ石をあしらった「サンゴペンダント」
 
輝き増す 個性的なデザイン
 特別な日の逸品 大人の女性に
 
 木工家具作家のお父さんのもと、幼いころから木や木工道具に囲まれて育ったという森長さん。
 蝶や花、波など、自然をモチーフとする個性的なデザインは、すべて森長さんの手から生まれるオリジナル。黒檀(こくだん)などの木材から一品一品を切り出し、表面が滑らかになるまで丹念に紙やすりで磨き上げる。12回から18回ほど生漆を摺(す)り込む「摺漆(すりうるし)」という作業を繰り返し、顔料を混ぜた朱漆や色漆で加飾を施す。ここまでをすべて手作業で行うため、かんざし1本を作るのに、約1カ月かかるという。
「摺漆の工程は、布に染み込ませた生漆を木に刷り込んでは和紙で拭き取り、乾かすという作業の繰り返し。そして、1日作業したら、翌1日かけて乾かし、また次の漆を摺り込むので時間も手間もかかります」
 そのため、決して安いものではないけれど、「おこづかいをためて憧れのかんざしを買いに来てくれた高校生の女の子や、ご自分の78歳の誕生日祝いにと購入された女性がいらして、本当にうれしかった。特別な日に、とっておきのおしゃれをして、楽しんでいただけたらと思います」と森長さん。
 丁寧に作られたピアスやペンダントは、シンプルで上質な秋のニットやスーツを引き立て、クリスマスや忘年会などのパーティーなどでも大活躍してくれそうだ。
 森長さんが手がける漆のアクセサリーは、沖縄の女性の心に自信という名の輝きを与えてくれる。
取材/堀 基子(ライター)
 
 
 
 
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