週刊ほーむぷらざトップへ   バックナンバー
 
 
987
 
一般社団法人 Kukuru  代表理事
 
鈴木 恵 さん
撮影:高野生優(フォトアートたかの)
介護担う家族に寄り添う

 障害や病気など、ハンディキャップがある人を介護する家族は、自身の休みもままならない。そんな家族の負担を減らそうと、バリアフリー旅行支援や、一時的に介護を代わるレスパイト(休息)サービスを提供しているのが一般社団法人Kukuruだ。看護師で代表理事の鈴木恵さんは、自身も障害のある息子を持ち、介護生活を経験、幾多の苦難を乗り越えてきた。「経験者で医療に携わってきたからこそできることがある」と、家族の気持ちに寄り添い支援する。

 
小児在宅ケアの人材も育成
 
長野県から家族旅行に訪れた大島晴美さん一家に付き添い、観光地をまわる鈴木さん(左)。晴美さんの車いすを押し、サポートにあたる=7月25日、本部町・沖縄美ら海水族館(編集部撮影)
 
「沖縄旅行で楽しみ、癒やされてほしい」/
「技術よりも親の気持ちを受け止められるかが大切」
 
昨年10月、看護師を対象に県立南部医療センターで開催した小児医療的ケア研修会の様子。モデル人形を使い、気管内の痰の吸引や鼻からの吸引など、在宅看護で必要となる基本的な技術を指導する鈴木さん(右)(写真提供/鈴木恵さん)
 看護師として就職後、母親が脳梗塞で倒れ、介護が必要に。生まれた息子には障害があり、訪問看護の仕事をしながら母親と息子のW介護の生活を送ってきた。
 「介護は終わりが見えない中、24時間365日続く。肉体的、精神的に追い込まれても休めなかった」と当時を振り返る。預け先も見つけにくい上、行政支援は介護を受ける側にしかなく、家族は利用できない。「外出する、疲れたから休むなど、当たり前のことがままならないのが家族の現状。サポートが必要な時に得られない」。そんなもどかしい気持ちが家族支援につながった。
 バリアフリー旅行支援では、障害に合わせた旅程のコーディネートから入浴介助、同行介護までサポートは多岐にわたる。万一、具合が悪くなったら近隣の病院へスムーズに誘導するナースコールサービスなど、医療面も含めた細かいサポートは彼女ならでは。
 「私自身、沖縄の自然やゆっくり流れる時間に救われた。日ごろ頑張っている家族こそ、旅を楽しみ癒やされてほしい」と、障害があっても本人や家族がやりたいことができるよう力を尽くす。利用者の「また沖縄に来ます」「楽しかった。本当にありがとう」の声がやりがいとなり、「もっとできることはないか」とサービスの向上にもつながっている。

 「24時間子育て介護をしていると、頑張れないときもある。疲れたら休んでいいし、リフレッシュしてもいい。気兼ねせずに預けられる場を提供したかった」と、障害児や医療ケアが必要な子どもを見る親に代わり一時的に介護を担う在宅レスパイトサービスも行う。
 サポート前には、障害の程度や医療ケアの内容などを確認するのはもちろん、「初対面では子どもは不安になるもの。事前に顔を合わせておくことが大切」と優しくコミュニケーションを図り、親が安心して出かけられるよう気遣う。
 しかし、「小児専門の訪問看護ができるマンパワーが足りない。在宅ケアには医療者の支えも不可欠」と、看護師や事業所、ヘルパーなどが集う「おきなわ障がいケアネットワーク」とともに医療ケアの技術研修会や講演会も開催する。「技術も必要だが、一番は親の気持ちに寄り添えるか。介護生活の辛さを話す場もなく、悩みも抱えている。答えは出せなくても、その気持ちを受け止めてほしい」と、心的サポートもできる人材育成に力を注ぐ。
 一方で、情報を交換したり、介護の悩みを相談できる「ゆんたく会」を親と協力して開き、家族、医療者、双方の立場から小児在宅ケアを支える。
 「すべて私がしてほしかったことをしているだけ。感謝されることも多いけれど、支援することで私自身が癒やされているんです」。
 逆境を乗り越え、前を向き進む姿は、介護を担う家族にとって優しくそして心強いサポーターだ。(中村美穂)
 
 
ところで…+α
 「子どもが成人して、ある程度ケアが必要でなくなった途端、何をしていいのか分からなくなる親も多い」と話す鈴木さん。仕事をしようにもなかなか就けないのが現状だそう。しかし、「障害児を育てた親は、子どもの気持ちも介護する家族の気持ちも一番に理解できる大切な人材。資格がなくても、これまでの子育て経験をレスパイト事業で生かしてほしい」と、介護から手が空いた母親の雇用促進にも意欲的だ。多くの人が賛同してくれるといいですね。
 
 
P R O F I L E
すずき・めぐみ
1968年生まれ。東京都出身。日本赤十字社武蔵野看護専門学校卒業。看護師として、大学病院・日本赤十字病院・乳児院に勤務。出産後、重症心身障害児訪問看護事業・訪問看護ステーションで小児・障害児を専門に従事するかたわら、医療コーディネーター(相談業務)も行う。自身、障害児の息子がいる一児の母。2009年沖縄へ移住。「ハンディキャップのある子ども支援は、家族支援があってこそ」と、同年任意団体Kukuru設立。2010年1月、一般社団法人となる。一般社団法人Kukuru 電話=098(859)8768
ホームページ http://www.kukuruokinawa.com
 
 

週刊ほーむぷらざ トップへ



沖縄タイムス購読申し込み


(株)タイムス住宅新聞社 ・週刊「ほーむぷらざ」編集部
画像及び文章の無断転載・無断引用・販売などは固くお断りします。
Unauthorized redistrbution of my data is strictly prohibited