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医療法人へいあん 平安病院
地域医療部  デイ・ケア係
作業療法士

 
照屋 若夏 さん
撮影:高野生優(フォトアートたかの)
高次脳機能障害者を支える

 ケガや病気などで脳が損傷を受け、感情や行動の抑制がきかなくなったり、新しいことが覚えられないなど、日常生活に支障をきたすさまざまな障害が現れる高次脳機能障害。「目に見えない複雑で、多彩な症状のために社会に出られず、毎日を苦しい思いで過ごしている人は多い」と照屋若夏さんは説明する。「当事者や家族が笑顔で、充実した毎日を過ごせる手助けができれば」と、高次脳機能障害を対象にした社会参加を支援するグループ訓練を実施。当事者と家族の拠り所になっている。

 
利用者の笑顔が励みに
 
 カードゲームを終え、得点計算をする照屋さん(右から2人目)とプログラム参加者。「○○さんって、計算速いですよね。私の合計点も教えてください」。得意なことを褒めることで、当事者の自尊心を高める
 
グループ訓練で「できること」増やし、社会参加を手助け/
「人の持っている力、つながりはスゴイ!」
 
 懐メロが流れる部屋の中で、グループ訓練の参加者とカードゲームを楽しむ照屋さん。
 「ルールを1つ増やしますよ。ここからは外国語禁止!」
 お遊びのように見えるが、計算をしたり、ルールを覚えて物事を進めることで、脳の活性化やコミュニケーション力を養う訓練になるという。
 「チャレンジ」と名付けられたプログラムは、仲間と一緒に楽しみながら行うのがポイント。「レクや創作活動、調理実習などから、やりたいことを参加者自身が決めて実行し、失敗や課題を振り返ることで日常生活で『できること』を一つずつ増やしていきます」
 物忘れが多く約束を実行できない、手順や道具の使い方が分からなくなる、気が散りやすいなど抱える症状はさまざま。本人に自覚がないことも多いだけに、「自分の症状を理解し、受け入れるのが第一歩。グループでの取り組みは、他の人の言動を見て自分の行動を振り返ったり、対人関係の構築にも役立つ。また、当事者同士だからこそ分かち合える思いもあり、仲間がいることで訓練意欲も高まります」
 プログラムの中で、できないことが出てくるとパニックを起こす人も。「その時こそ、不得意なことがあるのに気づいてもらうチャンス。なぜそうなったか、次はどうしたらいいかを一緒に考えます」
 逆に得意なところは褒めて、頼りにする。「周りから認められる感覚を味わうと、今の自分を受け入れやすくなる」
 参加者からは、「今は家の中で自分ができることをやるだけで家族は喜んでくれるし、会話も増えた。今の生活も幸せかもと思えるようになった」との声も。「新しい価値観が生まれると、本人も家族も気持ちが楽になると思う」

 4年前、夫の仕事の関係で移り住んだ東京で、高次脳機能障害を支援するデイケア施設に勤めたことが、グループ訓練に目を向けたきっかけ。「沖縄にも必要」と帰沖後、高次脳機能障害支援普及事業の拠点病院である平安病院に就職。沖縄の風土や文化、病院の特性を踏まえ、「チャレンジ」を立ち上げた。
 スタートから2年半、プログラムを卒業して新たな道を歩む利用者も増えた。「近況を報告し合い、仲間と楽しく語り合える場を」と企画した卒業生の集い「チャレンジ友の会」は、好評を得ている。
 「人の持っている力ってスゴイ。一人ひとりの力が合わさってつながると、さらに大きな力が生まれる。そのことを、グループ訓練を通して実感する毎日です。利用者が夢や希望をかなえたり、新しい価値観を見つけて『今、幸せだよ』と話してくれるのが何よりの幸せ」とにっこり。
 当事者と家族の暮らしに優しく寄り添い、笑顔の連鎖で幸せへと導く。
(比嘉千賀子)
 

 臨床心理士や看護師、作業療法士などから構成された「チャレンジ」のスタッフは定期的にミーティングを行い、多様な視点からサポートの方針を確認する。精神科デイケアの中で高次脳機能障害を対象としたグループ訓練を運営するのは、全国でも数少ない取り組み。照屋さんは「以前のように仕事ができない自分を受け入れられず、うつ状態に陥ってしまう人もいる。だからこそ、精神科としてサポートに取り組む必要がある」と意義を語る。

 
 
ところで…+α
 取材の日、プログラム参加者と家族が体験談を聞かせてくれた。病気で倒れた後、「性格が変わってしまった」と感じていた夫が高次脳機能障害であることに気が付き、「チャレンジ」に通い始めるまで7年かかったという。
 当事者の夫は「自分の状況を認め、受け入れたことで、すごく楽になった」とにこやか。「目に見えない病気を理解してくれるスタッフに感謝。ココがある安心感は大きい」と妻。夫の就職先も決まり、家族は新たな道を歩み始めている。
 
 
P R O F I L E
てるや・わかな
1972年、那覇市出身。琉球大学農学部を卒業後、沖縄リハビリテーション福祉学院に入学。作業療法士の資格を取得し、99年から県内の総合病院などに勤務する。2009年、高次脳機能障害支援普及事業の拠点病院となっていた平安病院に就職。高次脳機能障害のある人を対象にした社会参加プログラム「チャレンジ」を立ち上げる。昨年からは沖縄リハビリテーション福祉学院で講師も務める。
平安病院デイケア・デイナイトケア 電話:098(877)6467
 
 

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