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コザの台所として栄えた「中部農連市場」(沖縄市)。以前のようなにぎわいは薄れたものの、時代の波を乗り越えてきた市場は地域に根ざし、思いも熱い。近年は観光客が訪れるなど、新たな一面も見せている。(中村美穂)
中部農連市場
沖縄市住吉
老舗マチグヮー 魅力健在
市場内の青果店は、セリが終わる午前9時半ごろからが一番にぎわう。県内外各地から取り寄せられた野菜や果物が並ぶ
火災を乗り越えて再建
ピークは早朝
午前6時前。農家は第3売り場前のスペースで野菜を並べ販売する。朝取りの青々としたみずみずしい野菜が並ぶ。一束も大きく、価格も安い
中部農連市場の朝は早い。夜も明けない午前2時には、収穫したばかりの野菜など農作物を販売する農家が市内のほか、うるま市や金武町からも集まってくる。各自のスペースにゴザを敷き、束ねた野菜を積み上げていく。同3時には総菜店の一部も営業し始め、市場の一日は始まる。
アーケード内は一方通行の通りを挟んで左右に売り場が分かれている。第1売り場と呼ばれる場所は、仕切りのない一つの空間。中には十数店舗がそれぞれ店を構え、主に総菜や豆腐、菓子類など、加工食品を販売している。早朝6時前には青果店から精肉、鮮魚店、乾物屋までほとんどの店舗に明かりが灯り、市場の活気はピークを迎える。一方で野菜を売り終え、早々と引き上げていく農家の姿も。
この時間の客はほとんどが飲食店や商店、弁当店などを営む人たち。足早に各店舗を回り、野菜や肉、鰹節(かつおぶし)など、次々と仕入れを済ませていく。アーケード内に車で出入りできる点も同市場の特徴で、店舗前に車をつけ、窓から商品を受け取り、支払いを済ませて帰っていく常連客もいる。
一方で市場のおばちゃんが入れたコーヒーを飲みながらゆんたくを楽しむ人の姿も。嘉手納町で弁当店を営んでいる神谷乗成さん(59)は、「23年間ほぼ毎日仕入れに来てるからみんな顔見知り。同業者もいるけれど、長年顔を合わせていると仲良くもなるよね」と交流が育まれている。
午前8時にもなると客足も少なくなり、ゆったりした時間が流れる。その時間帯からは青果店や精肉店などを回る一般客の姿も見え始める。客が入れ替わり訪れる精肉店では、豚の心臓や腎臓など、めずらしい部位もそろえていて、細かく説明してくれる。大きな肉の塊をさばく様子が間近で見られるのも市場ならではの風景だ。
近年は観光客も
豚の頭がズラリと並んだ精肉店。チラガー(豚の顔皮)をはがす作業を間近で見ることもできる
約45年の歴史を持つ同市場。以前はコザの台所としてにぎわっていたが、時代の流れとともに客が減り、2005年に市場で起きた火災以来、店をたたむ人も出て、商品を持ち込む農家も減少。追い討ちをかけるように、市内に産地直売の大きな市場ができてから、さらに客足も遠のいていった。
「店の人も客も高齢化してしまい、後を継ぐものもいない」と嘆く声もあるが、常連客の「週1ぐらいで来るけどね、農連に来たら何か元気が出るさぁ」との言葉が原動力となり、市場を支えている。
2年ほど前からは市場内のスペースを1日単位でレンタルできる貸し区画として活用するなど、新たな取り組みも行っている。また、一昔前のノスタルジックな雰囲気が体験できると、最近では観光客が足を運ぶ姿も見られ、地元密着型観光スポットとしての新たな魅力も認識されているよう。
「不況の中、市場も苦しいが、その中を残ってきた人たちだからツワモノだよ。マチグヮー、市場の時代がもう一度やってくる。そう信じている」
時代の波や火災を乗り越え、この場所で市場を守ってきた底力が見えた。
▲第一売り場の中は主に総菜や菓子類、豆腐、かまぼこなど加工食品が売られている。各店舗の仕切りはなく、それぞれ区分けされたスペースで販売している。午前中では売り切り、午後はほとんどが店じまい
▲山盛りのモヤシのヒゲを風で飛ばす。孫も手伝い、家族総出で袋詰め作業
それぞれが専門店
翁長 孝三さん
私の代でも35年、中部農連市場内で「翁長鰹節店」を営んでいます。乾物や豆類を主に扱っています。輸入物も少々ありますが、鰹節は鹿児島県の枕崎産、しいたけは大分県産と、産地にこだわり品をそろえています。小豆で一番柔らかいのは北海道産。一日水につけておけば炊飯器でも炊けますよ。
市場の魅力は顔と顔を合わせた対面売り。それぞれが専門店なので、産地のことから調理法まで何でも聞いてください。
市場は私の冷蔵庫
勝連 宏子さん
「アーケード入り口横で市場食堂を経営しています。食材はすべて市場から仕入れます。足りないものはすぐ買いに行けるし、市場は私の冷蔵庫なんです。何でもあって卸値だからほかで買うよりも安くて新鮮。各店舗それぞれ仕入れ先も違うので、買う野菜で八百屋も使い分けたり、品ぞろえに特徴があっておもしろいですよ」
構内でフリーマーケット
誰でも出店OK 掘り出し物も
早朝、農家が野菜を広げているスペースは、農家以外でも1区画(約1坪〜2坪)300円/日でレンタルできる(写真)。1日単位で借りることができ、時間制限なし。業種も問わないため、以前は糸満から海ぶどうを売りに来たり、たこ焼きの屋台もあったそう。現在は、ハンドメード作品や、食器、衣類などが並び、たまに掘り出し物に出合えることもあるという。同スペースを管理しているライフ・サービスの澤崎定美さんは「商売を始めてみたい人にとっては、1日単位で借りられるため試験的に使えるので利用しやすいですよ」と話す。
詳細は、ライフ・サービス(電話=098・934・8557)まで。
生鮮食品だけじゃない!
総菜、アメリカ菓子、衣服まで
▲総菜は100円からあり、煮物や揚げ物、ご飯類と種類も豊富
▲魚と肉を交互に出す市場食堂の日替わり定食(600円)。取材時はから揚げ
▲輸入品の菓子類が多く並んでいるのは外国人が多い沖縄市らしい
肉や魚、野菜などの生鮮食品店以外にも、総菜やお菓子、乾物などを扱う店もそろう同市場。お菓子にしても、祭事用から駄菓子までがそろうほか、アメリカ製のお菓子を多く並べてあるのも同市場の特徴。ほかには衣料品店もあり、市場内で一通りの物をそろえることができる。
また、市場の食材を使って定食を提供する「市場食堂」は、「おいしい、安い、体に優しい」がモットー。カツオや昆布、だし骨などでダシを取り、化学調味料を極力使用せず、野菜を多く使った栄養満点の料理が人気だ。定食はご飯も白米と玄米から選べ、小鉢もついてお得。価格も400円〜600円と、お財布にも体にも優しい家庭料理を召し上がれ。
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(株)タイムス住宅新聞社 ・週刊「ほーむぷらざ」編集部
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