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「ソムノクエスト株式会社」代表取締役
薬学博士
 
江口 直美 さん
撮影:高野生優(フォトアートたかの)
良質な眠りで社会を元気に

「寝付きが悪い」「夜、何度も目が覚める」など眠りに悩む人が増える現代。「美容に関することだけでなく、肥満にうつといった健康問題や集中力の低下による産業事故、キレる子どもの要因にもなるのが不眠。眠りの問題解決から社会を健康に!」と取り組むのが江口直美さんだ。国内外で睡眠研究に携わった経験を生かし、沖縄に「眠り草」として伝わるクワンソウから、睡眠改善や抗ストレス効果を持つ「ヒプノカリス」を開発。野菜としての普及にも力を注ぐなど意欲的だ。

 
クワンソウの可能性追求
 
 今帰仁村でクワンソウを育てる「今帰仁ざまみファーム」の座間味久美子さんと、クワンソウ畑の様子を見て回る江口さん(右)。「今の時期はクワンソウの花が真っ盛り。一面オレンジ色に染まって、観光で訪れる方もいるくらい」。酢漬けにした花や葉の粉末入りちんすこうなども同ファームで販売中(撮影/編集部)
 
肥満やうつなど「現代病の要因にもなるのが不眠」/
「美容や疲労回復のニーズと組み合わせ、多くの人に」
 
 睡眠研究では国内トップレベルの機関に所属していた江口さんがクワンソウと出会ったのは、駐在先のシンガポールでのこと。眠りに良い素材を探し求める中で県出身者から紹介され、「治安や気候の安定した沖縄で栽培でき、育てやすい原材料としての可能性」に着目。沖縄へ飛んだところ「今帰仁村に広がる良質のクワンソウ畑や栽培を手がける生産者の熱意、食事をヌチグスイと呼ぶ医食同源が根付いた風土に一目でほれ込んだ」という。同時期、睡眠研究に取り組むソムノクエストから声がかかったこともあり、健康食品の原料となる「ヒプノカリス」の開発に乗り出した。
 こだわったのは、安全性と加工のしやすさ。「健康食品に用いるには、抽出に使う原材料の安全性を確保するのはもちろん、なめらかでクセのない味や色に仕上げることや原価を下げる努力が欠かせない」と、有効成分を可能な限り残しつつ製造工程を減らすよう配慮。また県産業振興公社の支援を受け、琉大医学部と共に安全性を確認。睡眠改善効果やストレス緩和効果も実証した。
 さらに「睡眠改善だけでなく、美容や疲労回復など現代人のニーズと組み合わせた商品に取り入れてもらえれば、商品価値も上がるし、より大勢の健康維持に役立ててもらいやすくなる」と、製薬会社や食品メーカーが集まる展示会にも積極的に出展。科学的根拠を持つ同エキスは「睡眠改善に役立つ新たな天然素材」として注目を集め、配合商品が続々登場するまでとなった。

 睡眠研究に従事したのは、自身が子どものころから不眠を抱え、薬が効き過ぎてしまう体質だったのがきっかけ。「副作用の少ない睡眠薬を開発したいと薬学に進んだようなもの。研究者肌というより商品化されてこそ」と笑うのもそのためだ。「医師だった父が今でいう統合医療を施していた」のが、食と薬の双方から健康を考えるベースとなった。
 夜型社会、ストレス社会といわれ、うつや肥満など不眠が一要因とされる問題が低年齢化、高年齢化してきている中、「薬ではカバーしにくいこれらの世代も含め、広く不調予防に役立ててもらえるのは、誰でも安心して摂取できる食品だからこそ」と思いは熱い。
 3年前には沖縄へ拠点を移したが、「夏バテや冷えもなくなった」と気候風土や食文化を含めた沖縄の持つ潜在的な力を実感。その魅力をクワンソウと併せ、「地元のためにこそ役立ててほしい」と沖縄クワンソウ普及協会と協力し、本土の料理店や県内スーパーに足を運んで食材としての活用や販売を呼びかけたり、イベントをしかけたり。「農業支援や観光資源にもつなげたい」と夢は膨らむ。
 「肌の調子が良くなった」「自然に眠れた」など、商品利用者から届く喜びの声がやりがい。「眠りの質を上げることで元気になれば、意欲が湧いて毎日が楽しくなる」と、眠りから豊かな人生を目指し、まい進する。(徳正美)
 

 脳に直接作用し強制的に眠らせる睡眠薬と違い、「ヒプノカリス」は手足の血行を良くして体温を下げ、副交感神経を優位に働かせることで入眠しやすい状態へと導くのが特徴。今年8月には沖縄ハム総合食品(株)から、ヒプノカリス2000mgやパパイヤ乳酸発酵エキスに低分子フィッシュコラーゲンやヒアルロン酸、ビタミンCなどの美容成分を配合した美容飲料「OKI‐REI」(右)が発売。全国展開する大手製薬メーカーからも美容系ドリンク剤(左奥)が発売されるほか、ゼリーや顆粒(左前)などのサプリメントも販売されている

 
 
ところで…+α
 クワンソウに魅せられ、生産農家や食品企業と同社が共に発足した「沖縄クワンソウ普及協会」の顧問も務める江口さん。「2月から旬を迎える茎の白茎は、シャキシャキとした食感でクセがなく、炒め物の彩りやギョーザのタネにもってこい。今が見ごろの花もシャキッとした食感で、一輪丸ごと食べられるから贅沢ですよ」とのこと。ちなみに9月13日は協会が制定したクワンソウの日。この日にクワンソウガールの選出も行うそうだからチェックしてみて!
 
 
P R O F I L E
えぐち・なおみ
1959年大阪市出身。神戸女子薬科大学修士課程生薬学専攻終了後、薬剤師を経て、京都大学で薬学博士取得。京都大学大学院医学部文部教官助手、大阪バイオサイエンス研究所研究副部長、早稲田大学先端バイオ研究所教授を務め、機能性成分が脳や行動に及ぼす「行動神経科学」に関する研究中、駐在先のシンガポールで県出身者を通じクワンソウに出会う。2006年ソムノクエスト(株)と共同研究を始めヒプノカリスエキスを開発。その後沖縄に拠点を移し一昨年より現職へ。沖縄クワンソウ普及協会研究顧問。日本睡眠学会評議員 ソムノクエスト(株) 電話:098(988)1141
http://www.somnoquest.com
 
 

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