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オペラ
 
 
目と耳で楽しむ舞台芸術
 
 沖縄でも意外と見る機会に恵まれるオペラ。オーケストラの華麗な演奏にのせて歌い上げられる音楽の素晴らしさはもちろん、登場人物たちが身にまとう衣装や振り付けなど、舞台の演出のすべてが見る人を楽しませてくれる総合舞台芸術だ。今回は8月24日に上演されたオペラ「魔笛」(オペラ愛島主催)を取材。その構成・演出・日本語台本を手がけた洗足学園音楽大学教授で、藤原歌劇団団員の牧野正人さんにお話を伺った。
 
 
タミーノ(中井亮一、右)とパパゲーノ(又吉秀和)と3人の侍女のやりとりは、コミカルな演技と洗練された歌声が魅力。
 
歌い手の声や演技 衣装や演出にも注目!
 
開演を待つ間、舞台と客席の間の一段低い場所に位置するオーケストラピットを、興味津々でのぞき込む子どもたち
 「歌舞伎の世界で、一声二顔三姿といいますが、オペラも同じ。ストーリーのつじつまを追いかけて見るのではなく、歌い手の声や表情、演技や衣装を、目と耳で楽しんで」と、オペラの楽しみ方を教えてくれた牧野さん。
 もともと西洋のものだし、歌やせりふが外国語だから見ても意味が分からず、面白くないだろう。そんなふうに思い込まれ、食わず嫌いされがちなオペラ。しかし、牧野さんはこう語る。「能楽や歌舞伎だって、現代の日本人が見たら、言葉の意味はほとんど分からない。それではつまらないかといえば、生で見る古典芸能はやはり素晴らしい。オペラも難しく考えずに、クラシック版ミュージカルとして、その場面、場面の音楽と舞台を楽しめばいい」
 また、演出もオペラを盛り上げる一つの要素。「日本には日本のオペラの楽しさがある」とも。例えば、今回、牧野さんが演出した「魔笛」は、せりふはすべて日本語。歌はドイツ語で、歌詞が分かりやいように日本語訳の字幕が表示された。「魔笛の登場人物のキャラクターに合わせてせりふも考えて、『イケメン』『マジっすか』なんて今どきの言葉も使ってみました」と笑う。
◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇
絶望したパミーナ(平山留美子)を3人の童子が必死で諭す 夜の女王(山本令子)の迫力と華麗な独唱に、会場は静まり返った
 「魔笛」は、モーツァルト作曲による、最も著名なオペラのひとつ。主人公の王子タミーノが、鳥刺しパパゲーノの協力を得て、課せられた試練をくぐり抜け、夜の女王の娘パミーナを救い出し、真実の愛を勝ち取るというファンタジックなストーリー。
 今回の舞台は、本土からの出演者に加え、県内在住の声楽家や演奏家、地元の学生も交えての上演。小さな子どもでも楽しめる演出になっていたため、会場には親子連れの姿も多かった。
 深い緑の森を舞台に、3人の侍女のシーンから始まる第一幕。歌声に合わせて表示された「すてきなイケメン」の字幕に場内が沸く。続くシーンでは、主要人物の一人であるパパゲーノがいきなり客席に登場! 観客を驚かせた。
 夜の女王のシーンでは、照明を使って三日月が象徴的に映し出され、神秘的な雰囲気をかもし出す。シンプルな舞台装置の中、照明を効果的に使う演出が印象的だった。悪者モノスタトスとその手下たちがパミーナに迫るシーンでは、全員であのひげダンスを踊ったり、エグザイルばりの動きを披露し、客席から歓声や笑い声が上がった。
 とりわけ場内を沸かせたのは、パパゲーノが夢に描く家庭のシーン。4歳の男の子と女の子が演じたチビゲーノ(息子)とチビゲーナ(娘)に、「かわいい!」という声援と拍手が贈られた。
 一方、シリアスなシーンでは、タミーノが歌い上げる艶やかなテノール、パミーナの悲哀をこめたアリア、夜の女王の華麗な超絶技巧のソプラノ旋律、高僧ザラストロの重厚な低音など、それぞれの個性がひときわ引き立ち、その魅力を満喫できた。
 大団円のエンディングの後、出演者や指揮者、演出家がカーテンコールに登場。鳴りやまぬ拍手こそが、観客の満足の証し。オペラならではの華やかな余韻に包まれ、舞台は幕を閉じた。
 
ストーリーにとらわれず ミュージカルを楽しむ気分で
 
出演者らが一堂に会したカーテンコール。左から2人目が演出家の牧野さん
 「言葉が分かるか心配だったけど、字幕も面白かったし、すごく楽しかった」「ダンスのシーンに笑った」。初めてオペラを見た小学生の子どもたちは、口ぐちに感想を語ってくれた。子どもたちや初心者にも、そしてオペラ愛好家にも、心から楽しんでもらえる舞台。これこそ牧野さんが狙った演出だ。
 「ポップコーンを食べながら…は、さすがに無理ですが、映画館へ足を運ぶような気軽さで、オペラを見に来てほしい」と話す牧野さん。オペラの上演がある際は、ぜひ足を運んでみたい。
注目作 !
父と娘の愛と悲劇の物語「リゴレット」
沖縄オペラ協会
  11月3・5・6日に上演
 沖縄オペラ協会は、11月3、5、6日の3日間、浦添市てだこホールでヴェルディのオペラ「リゴレット」を上演する。演出の馬場紀雄さんと出演者に、見どころと意気込みを聞いた。
リズミカルなセリフと家族愛
演出の馬場さんを迎えて行われた立ち稽古。おどけて絡むリゴレット役の翁長剛さん(右写真、中央)。左写真は、ジルダ役の宮城美幸さん=浦添てだこホール
 16世紀のイタリア。好色なマントヴァ公爵に仕える道化師・リゴレットが人知れず育てる娘・ジルダは、公爵に恋をする。しかし、ジルダをリゴレットの娼婦と勘違いした家臣たちは彼女を誘拐し、公爵に差し出す。娘を奪われたリゴレットは公爵殺害を計画するが…。
 「"父と娘の情"がテーマのリゴレットは、ヴェルディの傑作の一つ。子離れ、再会、どんでん返し、名調子のセリフ、歌舞伎のような感覚で楽しめると思います」と馬場さん。
 聞き応えのあるアリアや重唱に加え、「音楽のようにリズミカルなセリフが魅力。そのリズムを壊したくないから、原語にこだわりたい」と、全編原語上演(字幕付き)の意図を語る。
 「善悪がはっきりしていて分かりやすいので、字幕を見なくても筋は理解できると思う。"百聞は一聴にしかず"、音楽にひたるつもりで来てほしい」
 リゴレットは、沖縄オペラ協が上演するヴェルディ作品の第4弾。「1人の作家のオペラを毎年上演するのは、全国的にも珍しい。また、若手に大役を任せて育成を図る姿勢は、今のオペラ界に必要なこと。"家族"のようなつながりを持つ団体だからこその雰囲気が、作品にも生きる」
父娘役で師弟が共演
  11月3日(木)16:00開演
   5日(土)18:00開演
   6日(日)16:00開演
場所/浦添市てだこホール 大ホール
入場料/A席6000円
    B席5000円(全指定席)
問い合わせ先/沖縄オペラ協会
電話:098(876)0157
 ジルダ役は、桑江律子さん、宮城美幸さん、長谷川萌子さんのトリプルキャスト。宮城さんは「ドロドロとした思いが絡み合う人間関係の中で、純真無垢なジルダだけはキラキラと輝く存在でいたいと思っています。父娘の関係は、師弟関係に似ている。一緒に作り上げてきた師(翁長さん)との共演は楽しみ」と笑顔。
 一方、リゴレット役の翁長剛さんは「前半はふざけて、後半は復讐に怒り、涙とかなり激しい。後半は高い声を張り上げる場面も多く、短期間で3公演はかなり挑戦的。若い人たちの魅力も存分に感じてほしい」と語った。
(取材/編集部)
 
公演情報
◆琉球オペラ
 「アオリヤエ〜ようどれに眠る愛〜」
 日時/10月8日(土)19:00
 開演、9日(日)19:00開演、
   10日(月)16:00開演
 場所/浦添市てだこホール 大ホール
 入場料/高校生以下800円(当日1000円)
 一般1500円(当日2000円)
 問い合わせ先/浦添市教育委員会 文化課文化振興係 
 電話:098(876)1234(内線6211)
  ◆オペラ「奥様女中」(喜劇)※日本語上演
 日時/10月16日(日)
    (1)15:00〜 (2)19:00〜
 場所/浦添市てだこホール 小ホール
 入場料/一般3500円、学生2000円
     (当日は各500円増)
 問い合わせ先/日伊文化サロン リナシメント 
 電話:098(894)5220(黒島)
 
 
What's
オペラの舞台裏
 オペラの演目には、ギリシャ神話や歴史上の出来事をモチーフにしたものが多く、「魔笛」のようなファンタジックな作品は珍しいといわれる。
 本番までには、音楽稽古から始まり長期間の練習を要する。個人練習やパート練習から、アンサンブル練習、副指揮者稽古、立ち稽古、通し稽古、ゲネプロと呼ばれる本番と同じ進行で行われる総稽古を経て、本番を迎える。稽古の後、コミュニケーションを兼ねて飲みに行く回数がついつい増える人もいるそうで、業界の中にはオペラ貧乏という言葉もあるのだとか。
 また、王侯貴族や富裕層が集う社交の場としての歴史を持つオペラは、華麗でぜいたくな舞台芸術。本場ヨーロッパなどでは、たった1回の公演のために数千万円の舞台セットを組むこともあるという。
manner
オペラ鑑賞の注意点
◆時間には余裕をもって会場へ
 →開演に遅れたときは、勝手に入場するとほかの観客の迷惑になるため、必ず会場スタッフに声をかけて。

◆拍手のタイミングは?

 →周囲の人を見て。静かな曲の場合は余韻を楽しんでから拍手したり、曲が終わったと思っても楽章の間では拍手しないのが普通。

◆服装は?

 →カジュアルでもOKだけど、ちょっとドレスアップした方がオペラの非日常的な雰囲気を楽しめるはず。ただし、周囲の邪魔になる大きな帽子はNG。

◆花束やプレゼントは?

 →開演前に会場スタッフへ確認を。開演前にクロークへ預けるケースが多いが、出演者によっては舞台終了後、楽屋で手渡せる場合も。会場に持ち込むと、ラッピングのカサカサという音が周囲の方の迷惑になる場合もあるので要注意。「舞台の後、ファンの方が楽屋を訪ねてくださるのはうれしいもの。女性は花束が好きだけど、僕は花より団子かな。旅先なら、持ち帰れるものがありがたいかも」とは、自らも舞台に立つ牧野さんのご意見。
pick up
オペラ愛島(アイランド)
 「魔笛」を主催した「オペラ愛島」は、音楽大学受験セミナー(山本令子主宰)企画による、クラシック・コンサートを運営する沖縄の音楽事務所。音楽大学受験セミナーから琉球大学教育学部音楽科へ進学した学生の糸満愛さんが、2009年2月に小児がんの一種で亡くなったことを受け、「将来は音楽で社会に貢献したい」という彼女の遺志を継ぎ、音楽事務所を設立。その名前の一文字を名称に入れたのだという。オペラ愛島では、主催する公演の収益の一部を、病気と闘う子どもたちに役立てるよう、運営している。
 
 

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