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ミュージシャン Kiroroボーカル

 
玉城 千春 さん
撮影:高野生優(フォトアートたかの)
心に根付き芽生える歌を

 「歌って聞いたその時だけじゃなく、そこでどう生き、人の心にタネを植えていけるかだと思う。私の歌が彼らの中に根付き芽生えてくれたらいいな」と、7月に訪れた宮城県石巻市でのステージを振り返る玉城千春さん。2005年以来、活動の休止と再開を繰り返してきたが今秋、ソロで本格始動。歌い方を模索し続ける中、育児や震災を経てつかんだのは「今できることを一歩ずつ」だった。先月19日には初のソロシングル「神様」もリリース。テーマは挑戦。

 
 
ソロで挑む新たな世界観
 
 今年7月「震災復興支援チャリティイベントTBC夏まつり2011 絆みやぎ〜Smile Again!〜」に出演した玉城さん。会場に集まった家族連れや中高校生らに向け、新曲「朝日」や「生きてこそ」など5曲を「無我夢中で歌いました」(写真提供/ビクターミュージックアーツ)
 
「今できることを一歩ずつ」子育て、震災で得た確信/
「右往左往するけど、起き上がってぶつかっていきたい」
 
 ―神様に祈りが届くように、声にならない想い叫ぼう―
 のっけからパワフルに歌い上げる新曲「神様」は、これまでの柔らかなイメージとはまったく異なるもの。グルーブ感があり聞いているだけで口ずさみたくなる、元気になる曲だ。「これは震災後にあふれ出てきたもの。いろんなことがあるけれど、だからこそ大声で一緒に歌い叫んで、皆で元気になって、一歩ずつ共に生きていこうねとの思いを込めました」と語るまでには、長い道のりがあった。
 喉を痛め「満足に歌えなくなった」のは「Best Friend」のころ。「仕事も生活も出会いも、全てをもたらしてくれた歌が歌えなくなったことで、今ある幸せの全ても壊れてしまいそうで。歌うのが恐かった。ステージに立つ自信もなくなって。もう音楽と向き合うこともないかもしれないと思いました」
 結婚、出産を機に沖縄へ―。慣れない子育てや環境の変化に「大好きだった音楽すら聞けなくなったこともあった」が、「自分を必要としてくれる」家族の存在に次第に歌への思いを募らせ、Kiroro10周年を機に活動を再開する。だが、気持ちばかりが空回りし思うように歌えないジレンマに第3子の妊娠も重なり、再び活動を休止せざるを得なくなる。
 「子育てで動けない今、歌うために何ができるんだろう。そう思った時、息子たちがハイハイからちょっとずつ歩けるようになり、今では逆立ち歩き目指して頑張るように、私も一歩ずつでいいんじゃないかって気付いたんです」
 ソロでと決めたのは「失敗を恐がらず挑戦したかった」からだ。発声の基礎から学び直すべく月に2回、福岡とを往復。厳しいはずのレッスンも「叱られ指摘されるたびに、まだ伸びしろがあるんだと思ったらうれしくて」。成長の手応えが本格始動を後押しした。

 今年7月には仙台にいるスタッフからのメールがきっかけで、被災地でのイベントにも参加した。皆が喜んでくれる一方で、言葉にならない状況を目の当たりにし、当事者でない自分が「何を話せばいいのかも分からなくなって」と戸惑いも大きかった。
 「あの時はいっぱいいっぱいだったけど、帰ってきて私は母親なんだからと思い直したんです。今度はお母さんを亡くしたすべての方に『どこにいたってずっと見てるし、ずっと応援してるのが母親だよ』って伝えたい」
 今できることを、できる範囲で―そんな思いも込めて完成させたのが、宮本笑里さんと作り上げた「朝日」。今月23日にリリースするニューアルバムに収録されている。ほかにもアルバムでは小田和正やスキマスイッチ、Coccoなどさまざまなアーティストとコラボレーション。「自分にはなかった言葉やメロディーをもらいながら」多彩な表現方法に文字通り挑んだことで、「新しい自分を引き出してもらった。Kiroroの音楽は、こういう人になりたいって憧れで作っていたけど、今回のはハダシで走っているカンジ」とあけっぴろげな笑顔を見せる。
 「沖縄は、自分の中の汚れを落として凝りをほぐしてくれるお風呂みたいな存在で、東京と行き来する今の生活が自分には合っている。右往左往するけど、失敗もするけど、起き上がってぶつかっていきたい。歌い続けてさえいられれば、どこでだって輝ける!」
 進むべき道を見いだした瞳に迷いは無い。 (徳正美
 
 
 初のソロシングル「神様」のジャケット。パワフルかつグルーブ感のある歌声に思わず引き込まれる「神様」ほか、福原美穂の「LOVE〜winter song〜」や美空ひばりの「真っ赤な太陽」のカバー曲(ライブバージョン)も収録されている
(写真提供/ビクターエンタテインメント)
 
 
ところで…+α
 東京に出る時は「子供のお迎えも一族総動員」と感謝する玉城さん。「仕事の時はキレイにしてもらってるけど、私、家では素っぴんで『コラッー!』って叫んでる。でもそれでいいし、周りも何かあったら教えて下さいって思う。周囲の目を気にしてたら逆に母親が萎縮しちゃうしね。だからお母さんたちにも、『カッコつけなくていい。がむしゃらな姿こそカッコいいよ!』って伝えたい」。思いは同じ。母として女性として、共に強く、しなやかに歩いていきましょう!
 
 
P R O F I L E
たましろ・ちはる
 1977年、読谷村生まれ。1998年、Kiroroのボーカルとして「長い間」でメジャーデビュー。「未来へ」「Best Friend」などのヒット曲を生み出す。2006年秋、結婚・妊娠を機に沖縄へ戻り、子育てのために活動の無期限休止へ。その後、活動再開と休止を繰り返す。2010年、福岡にある音楽塾ヴォイスに通い始め、塾長であり、YUI、絢香などのプロデュースを手がける西尾芳彦氏と出会い、歌うことを学びつつ曲作りに取り組む。10月19日にはソロデビューシングル「神様」、今月23日にはニューアルバム「Brand New Days」をリリース
 
 

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