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真摯に向き合う姿勢がカギ
 
 
体一つ、センス一つで勝負するアスリートやアーティストは、いわば“自分軸”を最も問われる人々だ。ここではその軸の養い方や迷った時の対処法、自分を持った上で人や社会と繋がる術を聞いた。(徳正美、東江菜穂)
 
写真(上/表紙右下)・永嶋奏子/取材協力・TONY'S HONOLULU HAMBY店
PROFILE
しのみや・りゅうぞう 1976年生まれ。埼玉県出身。APNEAWORKS代表。国内唯一のプロフリーダイバー。2004年にプロ転向、08年、アジア人初となる水深100mを達成。10年、水深115mに到達。同年、オーガナイザーとして沖縄に世界選手権を誘致。沖縄を拠点に、競技はもちろんフリーダイビングスクールのプロデュースや講演、執筆活動も行う。
http://www.apneaworks.com/
ライバルとも「率直に話し合える良い関係。勝っても『今回は、君に運があったね』という感じです。勝敗がすべてではない」と語る
今年10月に出版された篠宮さんの著書「心のスイッチ(竹書房・1470円)」。「僕の経験を元に、スランプの乗り越え方や失敗の捉え方などを書いています。つまずいてしまったり、悩んでいる人にも読んでもらいたい」と篠宮さん。各項目の最後に書かれたひと言も、人生のヒントを凝縮しており、心に響く
 
 
 
 
 
 
プロフリーダイバー 篠宮龍三さん
「誠実に接すること。
    相手の意見も気付きのきっかけ」
 酸素ボンベなど呼吸器材を使わず、ひと息でどれだけ潜れるかを競う「フリーダイビング」。人間の限界に挑む、命がけの競技だ。水深115メートル以上を潜ったのは世界で5人。その1人が、篠宮龍三さん。
 「体一つで潜るから海との距離が近い。その分、練習不足を急場しのぎに取り繕っても、すぐに跳ね返されます。大事なのは身の丈以上のことをせず、心を入れて誠実に接すること。そうすれば、やっただけの価値が得られるのが魅力」と語る。
 「これをやる」と決めたら努力を積み重ね、それを出すだけ。己の力以上のものを武器にしない。「やれることをやったら、あれこれ悩まず相手に委ねます。ベストを尽くせば、結果がどうであれ己を責める必要はない」ときっぱり。
 それは人と接するときも同じこと。例えば、ライバルからテクニックを聞かれれば「秘密にしたい気持ちもあるけれど、本当にいいものなら伝えないといけないと思う。相手の意見も、誠実に話してくれているのであれば『気付き』のきっかけだと思って、素直に聞き入れます。自分のスタイルにこだわり過ぎると成長できないし、変な心理戦や足の引っ張り合いはしたくない」と、勝負や馴れ合いを超えた関係を築いてきた。
 「いいものがほしいし、いいものを提供したい。それには互いに心が入っていないとダメだと思う。モノを買う場合やサービスを受けるときも、それに心が入っているかを見ますし、見極める自分も誠実でいないと」と、競技者として人間としての心掛けを語る。



 もう一つ、大事にしているのが「直感」。競技の中で記録に手が届きそうでも、「少しでも違和感を感じたら、無理をせず引き返す」という。
 しかし、「欲」が出て直感に従うことができないのも人間。「直感を裏付けているのは『経験』です。水中でパニックになってブラックアウト(意識を失うこと)をしたりと、たくさん痛い目に遭ってきたからこそ、『あの時と同じだから引き返そう』『この程度の恐怖心ならコントロールできる』との直感が働く。それは信じて間違いない」と力を込める。
 経験は練習・実践で培うもの。それに加え、生活の中で直感力を鍛えるために意識していることは、「繊細なものに触れることですね。繊細な味付けのご飯を食べたり、おいしいお酒を飲んだり、いい音楽を聴くことや本を読むことでも感性を高めることができると思う」と、「五感」を働かせることを大切にしている。
 本は、判断軸がブレそうになったとき立ち戻らせてくれるアイテムでもある。「さまざまなジャンルの本を読みます。そこに直接的な答えが書いてあるわけではありませんが、ほしい答えは無意識にひっかかってくる」と話す。
 自分にも周りにも分け隔てなく「誠実」に。ニュートラルな姿勢で第一線をひた走る。
 
 

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