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落   語
 
 
一人で演じ分ける話芸の粋
 
 あるときは客席を爆笑の渦に巻き込み、あるときはホロリと涙させて人間ドラマを演じる、日本ならではの話芸、落語。県内には寄席こそないものの、年に数回は著名な落語家が来県してホールなどでファンを楽しませているほか、地元のプロ・アマが共演する公演などもある。今回は、沖縄県内で落語の魅力を伝えている北山亭メンソーレさんが出演した「第2回 笑い福らしゃ・健康寄席」を取材。落語の楽しみ方や基礎知識を教えてもらった。
 
修業を重ねて身につけた本格的な落語を披露する北山亭メンソーレさん。一人で何役も演じ分ける話芸に加え、表情やしぐさの面白さも見どころ=11月6日、那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール
扇子・手拭いが七変化
主に用いられる小道具は、扇子と手拭い。メンソーレさんによると、「落語家の世界では、二つ目や真打ちに昇進した際にお披露目の記念品として配ることも多い」という。沖な家三語笑さん(左)は扇子をマイクに、倫理亭マンマさんはカルテに見立て、それぞれの持ち味を生かした「まくら」でも会場を沸かせた。
 
せりふ回しや小道具使いにも注目!
 
 「たった一人の人間が、話芸としぐさ、人物の演じ分けだけで、見る人を大笑いさせ、感動させる。それが落語の面白さ。初めて聴きに行ったとき、想像力をかき立てられて、何もない高座の後ろに物語の風景まで見える気がした」とメンソーレさんは語る。
 落語の演目には、おなじみのこっけい話をはじめ、人情話や怪談なども。客席から見て右側が上手、左側が下手となり、登場人物が二人いる演目なら、上手を目上の役、下手を目下の役として演じ分けるのだとか。
 「小道具を使い分け、手拭い一本で書物や帳面、財布などを表し、扇子で筆や箸、煙管(きせる)などを表現するんですよ」。とぼけた与太郎さん、しっかり者の大家さんなど、典型的な登場人物のせりふ回しやしぐさのおかしさを存分に楽しみたい。
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誰にも遠慮せず、腹を抱えて大笑い。友人や家族と、あるいは一人でも気軽に楽しめる
 11月6日、那覇市のテンブスホールで行われた「第2回笑い福らしゃ・健康寄席」。開演を前に、満員御礼の大盛況。一番太鼓に続き二番太鼓が鳴り響き、期待感が高まる中、羽織姿のメンソーレさんが一番手として登場した。
 お客様の気持ちをつかむ「まくら」の語りで笑わせた後、いよいよ落語の本筋へ。演目は「金明竹(きんめいちく)」。古道具屋の留守番をしていた与太郎が、来客に早口の関西弁で難しい伝言を頼まれ、何度も何度も客に言わせた揚げ句に、伝言がなんとも珍妙に変化してしまうという、こっけい話。主人公の与太郎、古道具屋の主人とおかみさん、関西弁の客など、さまざまな登場人物を演じ分け、会場を沸かせるメンソーレさんの話芸は、まさに落語ならではの面白さ。深々と頭を下げてお辞儀してから高座を後にする姿にも、伝統ある落語の世界を感じた。
 高座返しの後、二番手の「沖な家三語笑」こと森田明さん(ラジオ沖縄社長)が高座へ。演目は「阿武松(おおのまつ)」。大飯食らいで相撲部屋をクビになった弟子が、よき後援者を得て、やがて横綱に出世するという人情噺。大学時代に落語研究会に在籍し、六代目三遊亭円楽さんに師事したという経歴の通り、見事な語り口に感動の一席だった。
 続いては、「倫理亭マンマ」こと久高学さん(マンマ家クリニック院長)が登場。「まくら」が大好きというだけに、抱腹絶倒の話が続出。笑い転げて、思わずハンカチで涙をぬぐう人も。演目「権助魚(ごんすけざかな)」では、浮気者の旦那を尾行する権助が旦那に丸めこまれ、網捕り魚を買って帰るものの、下手な説明でおかみさんにうそがばれるという話を、面白おかしく熱演した。
 トリは藤木勇人さん。30年前に家を出た娘の息子が祖父を訪ね、その魂胆を見透かされて、怪しいマブイ込みをされるというオリジナル演目。藤木さんならではのウチナーグチとコミカルな演技に、客席は爆笑に次ぐ爆笑。熱い拍手の中、追い出しの太鼓の音とともに公演は幕を閉じた。
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 「落語の最大の魅力は、老若男女を問わず、大笑いして楽しめること。時代劇と同じで、昔の言葉や歴史を知らなくても、誰が聴いても面白いのが落語」とメンソーレさん。
 寄席(落語などを上演する常設演芸場)のない沖縄では、ホールを会場にした「ホール落語」がほとんどだが、「数多くの落語家が出演する寄席と比べ、一人の落語家の演目をたっぷりと堪能できるのが魅力」だという。笑う門には福来る。まずは一席、楽しんでみてはいかが。
笑って 泣いて 感動して 誰もが楽しめる
 
Close up
東京、沖縄で落語に挑むウチナーンチュ
ウチナーらしさを追求
うちなー噺家(はなしか) 藤木勇人さん
 俳優業のほか、近年は「うちなー噺家」としての顔を持つ藤木勇人さん(50)。落語の演目を沖縄風にアレンジしたり、沖縄の出来事や物語を落語風にアレンジするなど、独自の藤木ワールドを創造し、現在は東京を拠点に活躍している。
 落語家の立川志の輔さんに師事し、沖縄と東京で一人ゆんたく芝居の定期公演を始めたのは20年ほど前のこと。2010年に立川志の輔の弟子として正式に認められ、県内外で高座に上がる。
 オリジナリティーあふれる藤木さんの演目は、コミカルなウチナーグチといい、沖縄ならではのストーリーといい、ウチナーンチュにはたまらない面白さ。必見の注目株だ。
◆公式ホームページ「ゆがふ」  http://www.fujikihayato.jp/index
 
沖縄にちなんだ創作落語では、藤木さんならではの抱腹絶倒の演技とウチナーグチで、観衆を笑いの渦に巻き込む
楽しさ伝え身近にしたい
北山亭メンソーレさん
 地元沖縄で落語の楽しさを伝えているのが、今帰仁村出身の北山亭メンソーレさん(29)。「もともとお笑いが大好きで、高校時代から友人と素人漫才などにチャレンジしていました。大学入学後、落語研究会に入り、初めて生で落語を聞いてその面白さに夢中になった」と語る。
 2004年、第一回学生落語選手権で見事優勝を果たし、大学を中退して上京、落語家の道へ。立川志の輔さんに弟子入りし、修行を重ねた。2010年に落語家を廃業して沖縄に戻り、現在は地元で活動している。「県内の小中学校で落語をやったり、お声がかかればカフェなどで出前高座もやりますよ。今年は小さなホールやライブハウスなどで独演会にも挑戦したい」とメンソーレさん。本場仕込みの落語を、目の前でぜひ楽しんでみたい。
◆ブログ「山城『笑』店業務日誌」 http://hokuzantei.ti-da.net/
 
江戸前の下町言葉で滑舌よく語り、粋なしぐさを演じて古典落語ならではの世界を楽しませてくれるメンソーレさん
 「オーケストラセミナー」は、地域貢献、情操教育の一環として、沖縄県立芸術大学音楽学部が毎年1回開催している公開講座。オーケストラの歴史や構成、使用される楽器やその特徴、指揮者の役割などが学べ、大人から子どもまで、誰でも参加できる。
What's
落語のいろは
 落語の世界には、独特の言葉や風習があり、それを知っていると、さらに落語を楽しめる。そんな落語の基礎知識をメンソーレさんに教えてもらった。
■落語家の位:
 前 座/一番下の位。興行では一番最初に演じ、高座返しや楽屋での雑用なども務める。
 二つ目/前座から二つ目に昇進すると、羽織や袴の着用が許される。
 真打ち/二つ目から真打ちに昇進すると、高座でトリを務めることができ、師匠として弟子をとることもできる。

■高座:落語が行われる舞台、または、そこで落語を行うこと。

■高座返し(右写真):
 落語と落語の間に前の演者が座っていた座布団をひっくり返し、
 メクリ(高座の横に置かれる芸人の名前が書かれた紙)をかえすこと。
  「座布団は三辺に縫い目があるのですが、高座の芸人と客席のお客様の縁が切れないようにということで、
  縫い目のない一辺を客席に向けるのがお客さまへの礼儀とされています」。
  細やかな気遣いが必要な仕事だ。

■まくら:落語の本筋に入る前に、客の気持ちをほぐし、つかむための導入話。

■演目:落語の題名。演題とも。明治以前にできた「古典落語」、大正期以降にできた「新作落語」、落語家が自ら新しいレパートリーとして創作したり、作家に依頼して作ってもらう「創作落語」などがある。
こぼれ話
  太鼓の音に込める意味
 開場の際に流れる太鼓を「一番太鼓」と言い、「ドンドンドンと来い」と聞こえるようにたたくそう。また、開演前に流れる「二番太鼓」は「お多福来い来い」と聞こえるように、「追い出し」と呼ばれる終演の際に流れる太鼓は、「出てけ出てけ」と聞こえるようにたたくのだとか。落語会に足を運んだときは、耳を澄まして聞いてみて。
pick up
落語を楽しむ一冊
「心をそだてるはじめての落語101」
定番の古典落語101話を集めた児童書。子ども向けながら、江戸文化の紹介など落語を楽しむための豆知識のページもあり、初めて落語を楽しむ大人にもお勧めの一冊。講談社刊/2940円(税込み)
information | 公演情報
◆新春北中城落語会
 日時/1月8日(日)
    18:30〜20:00
 場所/ホテルコスタビスタ沖縄2階
    オルキデア
 出演/北山亭メンソーレ
 入場料/1000円
 問い合わせ先/グクルの森
  電話:098(935)4850
 ※2月12日(日)、3月18日(日)にも
  開催

◆初春のコミュニケーション
 ことばでつなぐ絆〜朗読と落語〜
 日時/1月21日(土)
    14:30〜16:30
 場所/沖縄市立図書館4階ホール
 出演/熊澤南水(朗読、講演)
    演目:山本周 五郎「二粒の飴」
    北山亭メンソーレ(落語)
    演目:初天神
 入場料/無料
 申し込み・問い合わせ先/沖縄市立図書館
 電話:098(932)6881

◆落語&泡盛懇親会
 日時/1月28日(土)
    19:00〜
 定員/25人
 場所/神村酒造
 出演/北山亭メンソーレ
 入場料/2500円
     (工場見学・弁当・泡盛付き)
 問い合わせ先/神村酒造
 電話:098(964)7628
 
取材/堀 基子(ライター)
 
 

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