経済面で協力し建てた家で、子育てや老後を見守る2世帯の暮らしがしたいと考える家族が増えている。生活リズムや価値観が異なる世代が互いに居心地のいい住まいにするには、どんな配慮が必要か。2世帯住宅を数多く手掛けるアトリエ・ネロ(根路銘安史・代表)に、緩やかな共生を促す空間づくりの工夫について聞いた。
 
 アプローチ・玄関・半戸外を工夫して!
「緩やかな共生」提案
アトリエ・ネロ
 
独立 でもさりげなく見守る
 親と子がともに暮らす2世帯住宅。互いに気兼ねなく暮らし、子育てや急病時などのサポートがしやすい家でありたい。最近は、親世帯と子世帯の生活スタイルや価値観の違いに配慮し、玄関や階段を別々にした独立型のスタイルが多く見られるが、将来にわたって家族の「いいつながり」をつくるためには、プライバシーは確保しつつも家族の様子をさりげなく見守り合える工夫が欠かせない。
 「2世帯を考える際、たいていは、『生活を完全に分ける』か『一緒に住む』かのどちらかの選択で、互いの距離をどう取っていくか、よく分かっていないことが多いように感じます。設計の打ち合わせでは、これまでの暮らし方を聞き取りしながら、それぞれの世帯の関係や他人との距離感についてどこまで大丈夫なのかを読み取って、それを踏まえ、自然に接点が持てる空間づくりに配慮しています。子どもにとっても多様な世帯との触れ合いは学びになり、見守られている安心感につながると思います」
 同アトリエが手掛けた住宅では、アプローチや玄関、中庭や半戸外空間を自在に掛け合わせ、外と内、人と人を緩やかにつなぐさまざまな仕掛けが見られる(ケース(1)(2))。
 両事例の共通した特徴は、空間の自由度の高さ。必要に応じて建具で仕切ったり、部屋を交代して使えるよう空間が設定されている。「住み手の気持ちで離れたり、つながったりできる柔軟さを反映させました。ケース(2)の住宅では、いずれどちらかが住まなくなったら、その部分だけ仕切って賃貸にすることも可能です。これからの住まい、特に2世帯は、親の介護が必要になった時や子どもが成長した後など、家族や暮らしの変化に、どんなふうにも対応できる柔軟性も大切。ガチガチにつくり込まずシンプルにしておけば、住み手が自分たちの生活を楽しみながらつくっていけますし、経済的な負担を少なく、世代を超えて長く使われる住まいにもなると思います」
 家族の緩やかなつながり、助け合う暮らしのあり方など、2世帯の家づくりにはこれからの暮らしを豊かにするヒントが詰まっている。(岸本貴子)
 
 
 ケース(1) 階層で住み分け 中庭を2世帯の玄関に
 
中庭からアプローチするOさん世帯の玄関(2階)。玄関の土間を広く、開口を大きくして多目的に利用できるよう工夫
 
階層で住み分けた独立型のOさん宅。中庭を通して1階の親世帯と2階のOさん宅が緩やかにつながる
 実家の建て替えを機に、両親との2世帯住宅を建てたOさん宅。「互いの生活に配慮し、上下階で生活スペースを完全に分けてほしいとの要望がありましたが、外階段で行き来するだけになると、まったくつながりが持てなくなってしまいます。そこで中庭を設け、ここに2つの世帯の玄関の役割を持たせて互いに気兼ねせず気配が伝わるよう計画しました」。
 中庭に面した大きな開口から両世帯に光と風を取り入れるとともに、近隣からの視線を和らげる役割も。Oさん世帯が住む2階は、幅4.7メートル、奥行き約2メートルの大きなテラスが玄関になり、子どもの遊び場やLDKと子ども室をつなぐ廊下にもなっている。
 
 ケース(2) テラスで仕切る・つなぐを柔軟に
 
▲子世帯と両親世帯が暮らす多世帯住宅。アプローチだけでは独立型に見えるが、玄関を続き土間にして3世帯をつなげた ▲続き土間で声を掛け合うSさん一家。住まなくなった住戸は仕切って賃貸にすることも可能
 
中央に配置した住戸の子ども部屋。吹き抜けやテラスを通して互いの様子がさりげなく伝わる
 5人家族のSさん一家(夫婦・子ども3人)と旦那さんの両親、奥さんの母親と姉の9人が暮らす。傾斜地でかつ予算も限られていたことから、各住戸はシンプルな造りで横一列に並べ、コストを抑えた。アプローチはそれぞれ別に設けて独立性を高めたが、玄関部分を続き土間で全面開口にして3世帯をつなげ、みんなが集まりやすいテラスとして使えるよう配慮。テラスは、扉を閉じれば各世帯を仕切れるようになっている。
 「中央に配置した世帯の吹き抜け2階に子ども室を配置し、両側の親世帯からも見守りやすい構成としました。共働きで忙しいSさん夫妻ですが、子育てや家事も親世帯と協力してこなしているようです」。
 
 
 多世帯同居と子どもの成長 
多様な関わり方を身につける
 少子高齢化の進行や住宅取得難、共働き家族の増加など、さまざまな状況から2世帯同居の良さが見直されている。育児の専門家によると「多世帯の暮らしは子どもの心の栄養になる」という。子どもの成長と2世帯の関係を考えてみた。
日常にいろんな感情体験
 「子どもの豊かな自己形成には、多様な世代との触れ合いから見て感じる体験が大切。そういう意味からも2世帯同居は、核家族化で限られたコミュニティーになりがちな子どもの、豊かな生活経験につながると思います。日常生活の中で、いろんな人の思い、価値観など『違い』を体得することで、人との距離の取り方や関わり方を自然に身につけていけるようになります」と話す太陽学童の山内奈保子先生。
 また、核家族の場合、常に親と子が一対一で向き合うことになるだけに、子どもも親も逃げ場がなくなる。そんな時、年配者が近くにいると、子どもの話を黙って聞いてくれるなどクッション役になって、子どもや母親のゆとりにつながるのだとか。
 「でもね、おばあちゃん、おじいちゃんが必ずしも優しいとは限りませんよね。それでもいいんですよ、おこりん坊のおじいちゃんでも。ふだんの生活の中でいろんな目で見守られ、いろんな喜怒哀楽を感じられることが大切。多様な世代に囲まれて暮らしている子は話題や行動も多彩になります」

人と人のつながりで安心感

 共働きをしながら、家事や子育てを頑張る女性はたくさんいる。でも、親だけですべてをきちんとしなくちゃというのは難しい話。
 「かえってそれが自分を追い込んでしまう原因にもなります。核家族だけで頑張るのには限界があり、周囲の人にもっと委ねることも必要」。そのためにも、近くに頼れる親が居ることは、子どもの急な病気、毎日の目配りなどさまざまな助けになる。親世帯にとっても適度な家事の分担は、生活の張りになるという。
 「委ね合える環境があれば、子どもにとっても、人と人がつながっているという感覚を実感できるようになります。こうした人の支え合い、つながりを生活の中で多く経験してほしいですね」

温かな暮らしの思い出を

 人生経験がある分、年配者は子どもの見守り方にもゆとりがあると言われている。ゆっくりと接することで、子どもの成長にどんな影響があるのだろう?
 「子どもが話し掛けやすいと思うんです。家の中でもお年寄りって、たいていは同じ場所に座って家族の様子を眺めていたりするでしょ。それも家族の安心感につながっているんですよ。母親が忙しくて目が行き届かない場合も、いつも自然に見ていてくれる人がいると子どもは安心して、伸び伸びできる。大人になると、ふとした時にそうした暮らしを思い出し温もりを感じたりします。そうした何気ない生活での見守り、愛情の記憶が、いろんなことを乗り越える時の支えになる。家はそんな安心感をつくる場所でありたいですよね」
 
 
沖縄タイムス購読申し込み

(株)タイムス住宅新聞社 ・週刊「タイムス住宅新聞」編集部
画像及び文章の無断転載・無断引用・販売などは固くお断りします。
Unauthorized redistrbution of my data is strictly prohibited