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佐喜真 望さん宅
 
避暑地思わす緑の演出
 
ムイが見渡せる大開口が開放感を呼ぶリビング。眼下には川が流れ鳥の声もこだまする落ち着いた雰囲気で、三方に住宅が近接する密集地であることを感じさせない
(写真/高野生優・フォトアートたかの)
 
 佐喜真望さん(61)宅は、外からは建物がほとんど見えないほど三方に住宅が近接する首里の住宅密集地に建っている。一見閉鎖的な印象だが、室内は気持ちのいい光が降り注ぎ、四方の開口には緑や空が映る心和む空間。特にムイ(森)を見渡すリビングは「眺めもいいし、静かで涼しい」と避暑地気分を満喫している。
 
 
密集地でも悠々と
 
2階和室。開口部のつなぎ目(右手前)はサッシを入れてガラスを補強。引き戸を設ける際の戸当りも兼ねている
 
要望は2つ
▲シンプルな打ち放しの外観。全景が捉えられないほど隣家が迫る ▲頭上から光が降り注ぐアプローチ。隣家が迫る東側には目隠し用の壁を設けた ▲洗面脱衣室と浴室。間仕切りをガラスにしたことで閉塞感を解消。タイル張りと坪庭の効果でホテルのバスルームのよう
 大学で西洋史を教える佐喜真さん。以前はアパートに住んでいたが、物が増え、足の踏み場もない状態だったという。「地デジ化でテレビを買ったものの置く場所もなくて。定年後のつもりだった家づくりを繰り上げることにしたんです」。
 設計を依頼した建築士とは、趣味の少林寺拳法を通じて意気投合した間柄。建てた家を見学し、そのデザイン感覚や人柄に「全幅の信頼を寄せることができた」のも後押しとなった。
 とはいえ「正直、住まいには無頓着」だったこともあり、要望は2つだけ。仕事柄、増え続ける書籍を整理できる広い書斎が欲しいこと、「道楽で集めた」と笑う。 100着以上ものスーツやバッグが収まるクロゼットが必要なこと以外は任せることにした。
書斎はミニ図書館
▲1階書斎。コートから降り注ぐ光で、落ち着きはあるが明るい ▲1階のデッキコート。書斎と寝室に光と風を呼び、広がりをもたらす空間となっている
 敷地は、交通量の多い幹線道路から少し中に入った、首里の一角にある。
 外からは近接する隣近所に埋もれてしまいそうだが、敷地内の印象は一転。アプローチには頭上から光が降り注ぎ、玄関、階段ホール、浴室とそこかしこに緑が揺れる落ち着いた雰囲気で、都会の住宅密集地にいることを忘れてしまうほどだ。
 中でも2階のリビングは「向かいの家とも離れているから視線も気にならないし、ムイは手入れの要らない庭のよう」とお気に入り。一面に広がる空やムイを眺めながら、お茶を片手に読書ざんまい。BGMは鳥の鳴き声だ。
 1階に設けた書斎は、スライド式の書棚6基が設置され、さながらミニ図書館。コートから気持ちのよい光が差し込む上、「スペースがあるから本が増えても安心」と喜ぶ。
 住んで9カ月。「掃除しやすく物があふれることもないから、自然と家にいる時間が増えました」と、住まいへの愛着も生まれたようだ。
(徳正美)
 
 
佐喜真さん宅の工夫
開閉にメリハリ 視線抜き広がり
 
▲南側から見た外観。2階の床が既存のコンクリート塀ギリギリまでせり出しているのが分かる。リビングの眺めに浮遊感をもたらしているのも、このため(写真/アトリエトラッド) ▲玄関からホールを見る。西隣の庭木に向け窓を設けたことで、閉塞感を払拭
 佐喜真さん宅で快適さを呼んでいるのは、メリハリをつけた開口計画にある。
 隣家からの視線が気になる東、西、北は基本的に閉じ、隣地が4メートルほど下がる南側に向けて思い切り開くことに。これにより、密集地でありながら、南に広がるムイを悠々と眺めつつ、人目を気にせず過ごせるのびのびとした暮らしが実現した。
 「お子さんがいるご家庭や女性の一人暮らしだと、おそらくこうはいかなかった」と設計者の渡慶次さん。リビングは2階にあるため、隣地との差は8メートル以上。落下の危険性やプライバシーの確保を優先すると腰壁を設けるプランにならざるを得ず、眺めも変わってくるからだ。
 閉じている東、西、北側も、ピンポイントで開口を設置。玄関正面にある吹き抜けの開口部は、西隣の庭に生えているフクギの大木に向けて、東・北側についても隣家の建物わきのちょっとした緑に向けて開口を設けることで、四方に視線が抜けるよう工夫。密集地でも広がりを感じさせる住まいとなっている。
 
 
内から外まで

造り付けか否か 収納法は柔軟に

 
▲スーツとバッグ専用のウオークインクロゼット。上下2段に吊り下げて収納できるため、出し入れもラク
 収納を考える際、基本となるのが「何を、どこに、どのくらい収納するか」、また「使う場所に使う物を収納する」こと。
 佐喜真さんは好きで集めたブランド物のスーツが100着以上、バッグもかなりあったため、吊り棚を2段重ねた専用のウオークインクロゼット(右写真)を設けた。
 普段着や下着類は寝室の一角に収納しているが、家族構成やライフスタイルによっては別の考え方も。例えば、家族が多い場合、バスタオルや下着、パジャマ類は浴室脇にまとめ、それ以外はそれぞれの自室に収納するのも手だ。
 また「昨今はウオークインクロゼットを設けるのが当たり前になってきていますが、サイズを合わせた移動式収納を作っておくのも一つの手。例えば、家族が多い間はスペースを区切って部屋の一部をクロゼット風に使い、子どもが巣立った後は家具を寄せて部屋を広くすれば、空間を余すところなく使えますよ」と渡慶次さん。
 造り付けるか、否か。収納法は家族構成やライフスタイルに応じ、柔軟に考えたい。
 
 
 渡慶次脩に聞く設計のポイント
柱状改良体と片持ちで面積確保
柱状改良体を入れ、南北の壁に鉄筋を密に入れることで片持ち梁とし、2階リビングを既存の塀ギリギリまで広げた。
※柱状改良体/現場の土とセメントを合わせて造った円形の支柱。機械が入らず杭が打てない敷地でも有効
 最も苦労したのは、床面積の確保。南側の隣地が4m下がっていたため、本来ならば県の条例により建物を隣地境界線から7mセットバックさせる必要がありました。そこで構造設計者と相談の末、隣地のグランドレベルから30度の範囲内とそれ以北に26本の柱状改良体(右図参照)を入れる案でクリア。2階南側は片持ち梁にすることで、床を既存のコンクリート塀ギリギリまで広げています。
 周辺は細い路地で、小型の工事車両で何度も行き来しなければならず、工期も限られていましたが、建設業者の協力もあり、建設費は通常の2割増程度で収めることができました。難条件下でもやり方次第。今後もさまざまな工夫で施主の要望に応えていきたいと思います。
 
 
建築データ
家族構成 :1人
敷地面積 :175.05平方メートル(約53坪)
1階床面積:74.04平方メートル(約22坪)
2階床面積:80.76平方メートル(約24坪)
建ぺい率 :47.95%(許容50%)
容積率  :88.43%(許容100%)
用途地域 :第1種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式

建築費:3600万
設  計:アトリエトラッド
     渡慶次 脩
施  工:(株)紀建設
電  気:南光開発(株)
水  道:(有)インター設備
キッチン:(有)モブ

アトリエトラッド
電話:
098・850・4747 http://www.atelier-trad.com/
 
 

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