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Iさん宅
 
涼風抜けて家中さらり
 
芝庭に面した南の開口から風が流れるダイニングや和室。家の中心に位置するキッチン上部の天井に傾斜をかけて高窓を設け、北側からの柔らかな光を取り込みながら、熱気を逃す効果も。風に揺れるのれん、スギ板の床や無垢の家具など、どれもさらっとした質感で目にも肌にも心地いい
(写真/高野生優・フォトアートたかの)
 
 前庭や屋上には青々とした芝生、駐車場には植栽のスリットを配し、緑に囲まれたIさん宅。南に開いた表座は広間や和室がひと続きに並び、庇や縁側を介して涼やかな風が抜ける。「元からクーラーはあまり使わない生活で、家を建てる際も明るく涼しいのは必須条件でした」とIさん(43)。日差しの強い日でも、窓を開けてよしずを降ろせば光も風もいいあんばい。2人の子どもたちは、庭や縁側、家中を思いっきり走り回る。
 
 
外とつながり心地良く
 
リビングからの眺め。庭の緑や庇に掛けたよしずが、通りからの視線を緩やかにかわし、暑さも和らげる。自ら柿渋を塗ったスギ板の床は、新築時からあめ色になってツヤも出てきた
 
南に開き涼風招く
縁側でリズムをとりながらはしゃぐ子どもたち。木陰のような縁側は、家族みんなの遊び場だ
 4人家族のIさん一家の住まいは、戸建て住宅が建ち並ぶ新興住宅地に建つ。住み始めて2年余たった平屋の周りは、芝生やアカバナーの緑で縁取られ、通りの一角をさわやかに彩る。
 「住み始めはカーテンを閉めがちでしたが、緑が伸びるにつれてオープンに。この前の台風でゴーヤーは葉が落ちちゃったけど、窓1枚覆うほどの緑のカーテンになっていたんですよ」と話す夫人。
 芝生の管理はIさんの担当で、「ビール片手に水まきするとリラックスできるし、家の中も涼しくなって過ごしやすい。忙しい時は回数が減ったりしますけど、手を掛けて育てたい」と緑の効果を実感する。ホッとするのは、縁側でのんびりしながら庭で花火や土遊びをする子どもたちと過ごす時間。緑が身近なことで暮らしのリズムがゆっくり。家への愛着も増したよう。
 ほかにも、Iさん宅には南風を取り込む建物の向きや仕切りを減らした開放的な間取り、外と内とを緩やかにつなぐ庇(ひさし)や縁側など、涼を得る空間使いの工夫が随所に見える。
 キッチンを中心に、南側を表座、北側を裏座に分けて、表座にはダイニングとリビング、和室を、裏座には個室をひと続きに並べた。さらに、キッチン裏にウオークインクロゼット、西側には水回りをまとめ回遊できる造りになっていることで、家事がしやすく、風通しも良い。
手を掛け育てる
住まいの中心で、家族の中心にもなっているキッチン・ダイニング。後方に見える食器棚は、以前から使っていたものを新居に合わせてリメイクしたもの
 もう一つ、ジメジメした暑さを和らげるのに効果を発揮しているのが、スギ板の床や漆喰(しっくい)壁、木の建具、家具といった自然素材。特にスギ板の床は、さらっとした感触で心地いい。
 「自然の風合いが気に入ってて、床に柿渋を塗ったり壁の漆喰塗りするのも、友だちの手を借りて、皆で仕上げました。だから壁のあちこちに、みんなの手跡や思い出も。自然素材って、自分で手が掛けられるのもいいですよね。早速、クレヨンで落書きされちゃったけど」と苦笑するIさん。「子どもたちがいつも床で気持ち良さそうにゴロゴロしているのを見たら、家っていいなと感じる」と夫人。
 涼しさにプラスアルファの住み心地で、緑も家も、家族と一緒に成長するのが楽しい住まいだ。
(岸本貴子)
 
 
▲新興住宅地の角地に建つIさん宅。高さを抑えた琉球石灰岩の石垣や木の塀、植栽の緑が建物の印象を和らげ、通りに気配を伝える   ▲ダイニング横の和室は、将来の母親との同居を見越して用意した。庭やヌレエンとのつながりが、昔ながらのウチナー家を思わせる
 
 
Iさん宅の工夫 涼しさは敷地全体でつくる
緑化で日差し和らげ
 
照り返しを防ぎ、内外に好環境をもたらしている前庭
 屋上や庭の緑化は、建物への熱負荷を抑えるだけでなく、景観の美化にも有効。植物からの蒸散作用で地面や屋上の熱上昇を抑制し、さらにアスファルト面に当たる日差しの照り返しによる熱の進入を防ぐ効果も期待できる。
 ちなみにIさん宅では、真夏日でも、帰宅後に窓を開けて風を入れ替えればクーラーの効きが早く、就寝の数時間以外は使わないという。設計を担当したアトリエ・ネロでは、建物の躯体を高耐久のコンクリートで造ることで、表面のガラス質が防水材の役割を果たせることから、その分防水対策にかかるコストを削減して屋上緑化を実現している。
 「緑化には、水やりなど手間が必要になるので、住み手のライフスタイルに合うかどうかを確認しながら提案しています。幸い、Iさん夫妻は自分たちで手を掛けることに積極的でしたので屋上緑化も設計当初から組み込んでいました。さらに住み始めてからも、自分たちで庭や生垣を工夫していることが、緑の力を生かした涼しい環境づくりにつながっていると思います」と担当者は話す。
 
 
 
▲青々と芝が育つ屋上。砂利部分は緑地で浸透しきれない雨水を排出するため。上空写真で見ると、庭と建物の区別がつきにくく、緑の敷地に見えるそう   ▲駐車スペースにも植栽スリットを入れて、芝庭からの緑をつないだ
 
 
 アトリエ・ネロに聞く設計のポイント
昔の民家をベースに
 
▲窓を多数設けた裏座。通りからのプライバシーを確保しつつ通風・採光も調整
 自然を取り入れ、季節を感じながら暮らすIさん一家のライフスタイルと敷地の環境から導き出した住まいは、前庭があり南に開く、昔ながらのウチナーヤーのようになりました。
 「キッチンや庭を家の中心に」という夫人の希望もあり、平面プランは環境の良い南側に家族が集うリビングやダイニングを配し、庭や縁側と連続させて開放的に。キッチンと玄関の間の扉は内外自由開きにし、クロゼット内も通路として考えることで、家の中心でぐるりと回れる、回遊性が楽しい造りになりました。キッチンの天井高を上げて高窓を設置したのは、光が安定している北側からの採光と排熱を兼ねる目的から。
 また、裏座となる北側には突き出し窓を多数設けて、風の流れを促しています。縁側や庇は、強い日差しを避け、涼しさをもたらす装置であり、家族のくつろぎの場にもなりました。
 外に開き自然を生かすこと。緑化など手を加え暮らしを楽しむことは、涼しい住まいづくりにつながるだけでなく、地域とコミュニケーションが生まれ、安全安心なまちづくりにもつながります。
 
 
 
建築データ

家族構成 :夫婦、子ども2人
敷地面積 :320.68平方メートル(約97坪)
1階床面積:128.42平方メートル(約38.8坪)
建ぺい率 :43.08%(許容60%)
容積率  :40.05%(許容150%)
用途地域 :第1種中高層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造(壁式)
設   計:アトリエ・ネロ
      根路銘 安史・水上浩一
構造設計 :バス建築研究室 新川清則
施   工:(有)屋伸 屋比久 潤

電   気 :松島電気工事 松島良成
水   道 :(株)輝水 新垣直輝
箱(木)  :呉屋木工 呉屋達雄
キッチン・
ステンワークトップ: 
       LITTAI(リッタイ) 仲地研二
ガスコンロ・
レンジファン:(株)コーラルスタイル 松田芳宗
食洗機   :ミーレおきなわ 松川美佐子
玄関扉・テーブル
・イス   : まっくる屋 工房
        伊礼聡・新垣範雄
アトリエ・ネロ
電話:098・889・0103 http://www.a-nero.com
 
 

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