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Hさん宅
 
技をつなぐ木組みの家
 
 
「昔住んでいたウチナーヤーを造りたい。金物や合板は使わず、県産材を使いたい」と希望したHさん(49)。完成したのは、くぎや金物を使わない伝統的な木組みの2階建て。壁や床、天井、窓の桟(さん)まですべて木にこだわった。さわやかな木の香りが漂う室内には、光が差し込み風が抜ける。「家に帰ると、ほっとします」とHさん。木に包まれた住まいに、穏やかな空気が流れている。
 
 
 居間から掘りごたつのある畳間、キッチンを見る。傾斜地に合わせ3室に高低差があり、変化に富んだ空間。Hさんの希望で木材はすべて無垢の国産材、内装に県産材を用いた(写真左)
(写真/高野生優・フォトアートたかの)
 
 
程よく自然受け入れる
 
 
 
↑木の窓や戸が温かみのある玄関。下駄箱の上の照明は棟梁からのプレゼント   ↑住宅の中央にある中庭は、光と風の通り道。周囲に廊下があり、庭を眺めながらぐるりと回れる
 
←3つの仏壇がある一番座と二番座。ふすまを取れば大空間となり、人が集まる行事の際にも使い勝手がいい
 
建具もすべて木
 玄関を開け、室内へ入る。無垢(むく)のスギの床は足触りが柔らかい。中庭を眺めながら、廊下を進んで一番座、二番座へ。二間続きの和室は、人が集う時に活用している。
 家族が長い時間を過ごすのは、居間だ。天井の和紙や壁の漆喰(しっくい)といった自然素材が木に調和し、落ち着いた雰囲気を醸し出す。
 雨戸や窓、ドアなど住宅内の建具はすべて木で、金属類は使っていない。「子どもの授業参観で学校に行った時に、コンクリートの中ばかりで過ごしているなと思って。以前森林関係の仕事だったこともあり、できるだけ木を使いたかった」とHさん。
手仕事に愛着
↑居間に隣接するベランダ。小屋組みは、柱のほぞ(柱と梁や桁などを接合するために木材を加工した突起部分)が梁と桁を貫通する折置き組み
 一家が家造りを考えたのは、2年前。以前住んでいた中古住宅が手狭だったことや、長女の中学入学がきっかけになった。「昔ながらの木造家にしたい」と設備設計者の兄に相談。建築士を紹介されて、家造りがスタートした。
 施工中は、ほぼ毎日進捗状況をメールでやり取り。棟上式のために建築士と一緒にもちをついたり、国頭村森林組合へ木材を見に行ったりと、積極的に家造りに関わった。
 Hさんは「できるだけ沖縄産(うちなーむん)をと、リュウキュウマツやイタジイ、クスノキなどを使っています。そこもここも、すべて大工さんたちが手仕事でやってくれたところ。過程を知っているので、自分の家というより、みんなが造った家に住まわせてもらっているという感覚」と、完成した住まいに思い入れもひとしお。
 暮らし始めて約半年が過ぎた。夫人は「暑いのが苦手なのですが、風がすごくよく通るのでクーラーを使う回数が減りました。今まで住んできた家の中で一番涼しいかも。最初は木造は不安だったのですが、夫の熱意に負けました」と笑う。
 Hさんは、「雨が降ると窓が開けにくくなるし、風の向きも夏は南から、冬は北からで、季節によって変わることを肌で感じられる。多少のすきま風はあってもいい」と、日々の感じ方が変わったという。
 子どもたちは、段差のある部屋や回廊を駆け巡り、元気いっぱい。
 雨風や光、子どもたちの足音、木の香り…。自然も人もおおらかに受け入れる住まいには、五感に心地良い刺激がある。(栄野川里奈子)
 
Hさん宅の工夫
しなやかに強い 免震の伝統構法
 
↑玄関の枡(ます)組み。自然の力を吸収・分散し小屋にかける力を減らす。軒も深くなる
 Hさん宅には、木造住宅を長持ちさせるためにさまざまな工夫が施されている。
 構造は、「伝統構法」を主に、「在来構法」を組み合わせた。
 「伝統構法」は、柱と梁、桁を金物を使わずかみ合わせる木組みで、軸組みに貫を通す。地震や台風などに対抗するのではなく、力を受けて揺れつつもしなやかに強い「柔」の造り。免震構造のベースとなっている考え方だ。それに「剛」の在来構法の筋かいを合わせて、より強度を高めた。
 長いほぞや込み栓(木の栓)、部材を接合する楔(くさび)、だぼなどを使って木を組み合わせているので、補修が必要になれば部分的に抜いて交換することもできる。
 また、柱や梁など構造体を確認しやすい造りなので、傷んだ箇所を発見しやすい。
 ほかにも、沖縄の気候に合わせて、屋根は強風に強い寄せ棟造りとし、軒を深くして雨から家をガード。
 シロアリ対策として高床とし、湿気のこもりやすい床下に大きな換気孔を設けて風通しを確保。基礎は、すべてコンクリートで覆うのではなく建物の土台に沿って線上に設ける布基礎とし、シロアリの天敵の虫も生息する土壌生態系を残した。
 
内から外まで

職人の技随所に 家中に粋な物語

 
↑地震力を吸収する石場建て ↑一刀彫りの海老束屋上階
 木組みのほかにも、建具や仕上げなど、Hさん宅には随所に職人技が見られる。
 玄関には、「石場建て」がある(左写真)。石場建ては、自然の石の上に柱を乗せる伝統的な基礎工法。凹凸のある石の上に木材をぴったり取り付ける作業(光付け)をしなくてはいけない。光付けには、石と木材を密着させるため細かな調整が必要になるので、職人が2日掛かりで行ったという。
 Hさんは職人に「好きにしてください」とお願いしたため、粋な遊びがあちらこちらに。和室の繊細な欄間や、床の間の天井に配した湾曲の竿縁(さおぶち)(天井下に配する細長い化粧材)、玄関ポーチの敷瓦に押し花を入れた平瓦など、眺めるのも楽しい。
 二枚の棚板を左右から食い違いに吊った飾り棚(違い棚)をつなげる海老束(えびづか)には、一刀彫でこしらえた木の玉が入っている(右写真)。
 ここもあそこもと案内してくれたHさんは「家が組みあがったときの木組みは迫力だったし、壁も窓も障子も、すべて職人さんが造ってくれたもの。家中に物語があるんです」と感慨深げに話した。
 
後藤道雄さんに聞く設計のポイント
人、森育む木の住まい
↑住宅外観。屋上階の小屋組みには水タンクが設置されていて、取り替えやすいよう瓦を載せた状態で小屋組みをそっくり持ち上げられる造りとなっている
 Hさん宅は、地形を変えないことを心掛けました。敷地は傾斜地でしたが、平坦にせずに布基礎で段差をつけ、敷地形態に合わせて住宅を造りました。
 木材は数少ない循環する建材。木造住宅は、森を育みます。また、技術が必要な伝統構法の住まいは、職人を育てます。今回は熊本から職人を呼んだのですが、ゆくゆくは県内の職人へ技術を継承してもらえたらと思っています。
 昔ながらの木の住まいは、自然の力に対抗するのではなく、自然を受け入れて必要に応じて逃がす日本人の自然観が表れたもの。程よい暑さ寒さを感じるので、住む人の感性も育みます。
 ただし、木の家には手入れが欠かせません。木建具の開閉、床下の点検、障子の張替え…。手を掛けることで、家に愛着が湧くし、家が育つ。
 木の力を生かしたHさん宅は、500年は持つと考えています。
 
建築データ

家族構成 :夫婦、子ども3人
敷地面積 :411.85平方メートル(約124.8坪) 
1階床面積:133.45平方メートル(約40.44坪) 
2階床面積:39.71平方メートル(約12.03坪)  
建ぺい率 :41.39%(許容60%)
容積率  :42.04%(許容200%)
用途地域 :第1種中高層住居専用地域
躯体構造 :木造2階建て
設  計 :社会的企業じねん(自然)組
      一級建築士事務所 後藤道雄
構造設計 :同上

施  工(分離発注)
     
基 礎:伊禮建設
躯 体:尾方工務店
木 材:合志林工社(熊本)
屋 根:島袋瓦工場、
左 官:本多左官工業・川辺左官工業    
建 具:竹下建具製作所
電 気:(有)創栄電気工業
水 道:(有)南光設備
 畳 :大山タタミ店、ほか
社会的企業じねん(自然)組一級建築士事務所 電話:098・935・1363
http://nuchiyuruya.com/
 
 

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