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週刊タイムス住宅新聞 1568号 2016年1月22日発行
タイムス住宅新聞創刊30周年企画

 「あすなろ保育園」名護市

好奇心わく遊び 園舎はオモチャ

愛しのわが家・まち
 

 伸び伸び育つ保育の環境 

 子どもが人格形成において重要な時期を過ごす保育園。子どもたちが楽しく、健やかに過ごせる空間、環境づくりには何が必要か。保育者と設計者が共にアイデアを出し合い「子どもが自分の意思や力で思い切り遊ぶ中で、主体的に成長できる場」を目指したのが、名護市にある「あすなろ保育園」(運営・福祉法人城山ネットワーク会議)。どの保育室からもデッキを通して外が感じられる同園には、子どもの好奇心をかき立て遊びを後押しする仕掛けがいっぱいだ。

 
▲木組みの中の隅々まで遊びつくす子どもたち
▲光や風を感じる開放的なホール。つり橋や木組みのアスレチック、絵本スペースなど多様な空間構成
▲年齢の異なる幼児がいろいろな場で交流できる
 
▲涼しい陰をもたらすユウナの木で、木登りしたり、ぶら下がったり
▲遊具は補修しながら30年現役
▲緩やかな曲線を描く大屋根が印象的な園舎の外観。名護城の山の稜線(りょうせん)に溶け込んでいる
▲園庭から西側の園舎を見る。大屋根がかかった広場は、外でもなく内でもなくフレキシブルに楽しめる空間

 緑豊かな名護城の山のふもとにある「あすなろ保育園」。玄関を入ると、目の前には陽光に包まれた木の温かみあふれるホールが広がる。真っ先に目を奪われるのが、大きな木組みのアスレチック、2階のキャットウオークをつなぐロープのつり橋。子どもたちは木組みによじ登ったり橋を渡ったり、キャットウオークをぐるぐる回り縦横無尽に駆け巡る。

「やってみたい」を後押し

 同園を運営する福祉法人城山ネットワーク会議の山城一理事長は、「上下、左右にとぐるぐる回遊できて、大小さまざまな空間があるのが特徴。子どもの好奇心や『やってみたい』という挑戦を大人が遮らずに、思い切り遊び、安心して過ごせる環境づくりを重視しました」と話す。
 1階ホールの木組みやつり橋をはじめ、2階には水が流れ出るオープンスペースなど、同園を設計した建築士の比嘉和与さんは「園舎そのものが大きなオモチャがコンセプト」と話す。園庭には木登りができるユウナの木、複合遊具、隣地との高低差を生かした自然の滑り台、昔ながらのポンプや井戸、小さな畑も。これらのデザインには「遊びを通して、創造性を育む」との双方の考えが反映されている。

▲ロープのつり橋も人気。年長児をまね2歳児でもしっかりロープをつかんでちゅうちょなく進む

 父母たちも、「全身を使う遊びの効果」をわが子の様子から学ぶよう。1歳の子を同園に通わせる伊良波さん(42)は「木登りしたり自由に遊ぶ子どもを見ていると、たくましいなと思う。遊びながら年長の子とも仲良くなったり、自然に社会性も身に付けている」と成長を感じている。

遊びから生きる力に

 開園から35年の歴史がある同園。園舎は、5年前に同じ区内から現在の敷地に場所を移し、新築した。以前の園にあったユウナの木や遊具は補修を加えて移設し、卒園児の愛着も今につなぐ。
 敷地の南側は、隣地との傾斜もデザインの一部に取り入れた園庭に。その園庭を囲むように保育室が並ぶ。どの教室も幅広のデッキスペースから外につながり、光や風がよく通り心地よく過ごせる。

▲木組みの階段の中をぐるぐる巡る子どもたち。合間にある小さいスペースにも体をもぐりこませて移動

 雨降りが続いてもへっちゃら。子どもたちは園舎内でも汗だくになるまで遊びつくす。年長組の子がつり橋を渡るのを見て、中には「自分も」と挑戦したがる2歳児も。保育士はそれを止めずに、その子に付き添う。ゆっく橋を渡り終えた子は誇らしげな表情で、次の遊びに夢中になる。

▲取材に協力してくれた伊良波さん親子(左)と座間味さん親子

 5歳の娘を同園に通わせる座間味さん(42)は、「園舎を見ると、私も子どもだったらここで遊びたいと思う。一見危なそうに見える遊びも、先生方が丁寧にケアしてくれるから安心。今の時期にしかできないことを、園で思う存分できるのはありがたい」と話す。
 幼児期のワクワクしたことや怖かった思い、さまざまな体験から探究心や感性が育まれるという。「大人の役割は子どもの挑戦を否定せず、適切なサポートをすること。遊びながら転んだりけんかしても、なぜこうなるのか、どうすれば危なくないのか、仲直りできるかを考える力が育ち、生きる力につながる」と山城理事長。
 「伸び伸び育って」との願いが詰まった優しい空間には、元気な声とエネルギーがあふれている。

 

 「回遊し多彩な遊び楽しんで」

 設計者:(株)渡久山設計 代表 運天 勲さん  
          建築部 比嘉和与さん

▲設計者の比嘉さん(左)と山城理事長
▲オープンスペース。庇から滝のように水が流れ、簡易プールの利用に便利
▲はしごはステップの始まりを高さ60センチにして、低年齢児が届かないよう工夫

 保育施設の設計を数多く手掛ける(株)渡久山設計(浦添市)。あすなろ保育園の計画に当たり、建築部の比嘉和与さんは「庭と多様なたまり場、水の流れる滝、子どもしか入れない小さいスペースや基地もあるような、ワクワクする空間をイメージし、木組みのアスレチックやロープでできたブリッジを考案しました」と話す。園からの要望で、屋上には庇(ひさし)から水が流れる仕掛けや昔ながらのポンプなども用意した。
 同社からの設計提案について「ぐるぐる回りながら多様な遊びが楽しめる。子どもの目線を大切にしたプランだと思った」と山城理事長。
 敷地の南側に名護城の山があることから年間の風向きを考慮して、建物は東西のラインを軸に配置。冬場の厳しい北風は建物で避け、建物の西側には軒の深いデッキを設けて窓の向きを斜めにすることで西日を緩和した。
 使い勝手の良い空間構成も同園の特徴。園舎は玄関とホールを軸にゾーニング。玄関とホール付近に事務所を配し、防犯対策や園児の登降園の管理を効率的に行える「管理ゾーン」、2〜5歳児の保育室を配した「動的ゾーン」、乳幼児の保育室のある「静的ゾーン」の三つに分けた。スタッフが効率的に動ける動線や収納計画など、安心して保育ができる細やかな配慮や、衛生面・防犯面の最新設備を取り入れた現代の合理性も併せることで、子どもたちが健やかに過ごせる空間となった。

 
取材記事・編集/岸本貴子

=毎月第4週に掲載


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